自社の現状把握
「経営改善計画書」を作成するには、まずは自社がどのような状況にあるのかを把握し、その上で経営改善計画を立てていく必要があります。
「自社の経営状況ぐらいは、だいたい把握している」という経営者がいらっしゃいますが、実は意外とわかっていない経営者が多いのです。
決算書による現状把握
まずは、自社の決算書を3期分見て分析をしてみましょう。
ただし、決算書を見ても数字上からは見えない不良在庫の存在や回収できない売掛金があったりなど、決算書の数字が自社の本当の姿を反映していない場合もあります。
ですから、最初に会社の本当の実態を表すように決算書の数字を修正することが必要です。
また、自社の現状把握には、決算書と試算表を比較しながら行います。
「経営改善計画」を作成しなければならないような段階では、直近で売上高や粗利益率が大幅に悪化していることが多く、前年度の成果である決算書では現状把握ができないことが多くあります。
そのような場合は、損益計算に試算表を活用してください。
決算書の修正ポイント
決算書等の読み取りに当たっては以下の点に留意して、修正した現時点の「貸借対照表」「損益計算書」を作成し、経営実態の把握を行います。
① 売掛金、受取手形、完成工事未収金の中に回収できない“不良債権”があれば除外します。
② 棚卸商品の中に売れない“不良在庫”があれば除外します。
③ 貸付金の中に回収見込みのないものや経営者に対するものがあれば除外します。
④ 仮払金、立替金、未成工事支出金などの中に回収見込みのないものがあれば除外します。
⑤ 固定資産について減価償却が正しく行われていない場合は修正をして時価額を算出します。
⑥ 土地は時価額に修正します。
⑦ 有価証券も時価額に修正します。
⑧ 繰延資産はゼロ円で計算します。
⑨ 粗利益額は「売上高-当期仕入額」で算出します。
⑩ 経費の中に家計費が混入していないか確認します。
⑪ 売上高や経費に計上もれや架空計上がないか確認します。
⑫ 雑収入等については毎年計上できるのか否か確認します。
決算書以外に現状把握すべきこと
次に、自社の経営の現状と推移を把握するため、決算書の数字から自社の財務指標を算出し、あわせて借入金や資産の状況なども確認しておきます。
① 過去3年間の売上高、粗利益額、粗利益率、経費額、経費率、経常利益額、経常利益率の推移
② 借入金の内容(金額、借入先、口数、返済条件、担保、保証人、保証協会利用の有無)
③ 利益償還率(約定返済額に対するキャッシュフローの割合)
④ 資産内容(不良資産の有無と残高)の吟味
⑤ 各種税金、社会保険料などの納付状況
⑥ 個人名義の借入金(住宅ローン、教育ローン、高利資金等の有無と残高)
⑦ 担保となっていない資産の有無、あれば資産価値
⑧ 経営者が事業に新たに提供可能な個人資産
⑨ 個人事業者の場合は所得と家計費のバランス、簿外資産・負債の内容
経営改善計画作成方針の考え方
決算書等で直近の損益状況を把握し、資産・負債内容を実質的なものに修正できたら、そこから経営改善の方針を作成します。
①売上高が大幅に減少している場合
売上高を上げるための計画が中心となります。
ただ昨今は簡単に売上を増加させられる環境にないので、実現可能な範囲での増加を目指します。同時に経費の削減を行います。
②売上高の減少より粗利益率の低下割合が大きい場合
粗利益率の改善を図ります。
③経費が増加している場合
経費を削減します。
④借入金が大幅に増加している場合
借入金が増加している原因を確認します。
借入金増加の背景には、売上高の減少、粗利益率の低下、経費の増加などという原因が複合的に存在しています。
借入金を減少させるためには、背景にある原因の解決が先決となります。
⑤過剰な設備投資を行った結果借入金が増加している場合
過剰な設備投資を行った設備が売却可能であれば、たとえ購入額を下回っても売却を検討します。
その設備がなければ事業存続が図れない、という場合は経営を維持できるまでの売上高増加を図ります。
⑥売上高を増加させる見込みがなく、借入金の返済が明らかに不可能である場合
この段階では、撤退策を講じます。
一般には借入金の残高が年間売上高を超えていると、売上高から得られる利益だけでの返済は困難です。
ただ、粗利益率の高い業種(サービス業など)では返済計画が立てられる場合もあります。
売上高・粗利益率・借入金残高のバランスで判断します。