実際に経営改善を成功させるために
経営改善計画書は、作っただけで終わりではなく、その後は具体的に実行していく必要があります。
ただ、経営改善は今まで自社が取り組んでこなかったことを取り組むことになるので、強い意志を持って経営改善計画を実行していく必要があります。
ここでは、実際に経営改善計画を成功させるための方法を解説しています。
① まず着手する
計画書に盛り込んだ改善策の中で最も取り組みやすく、かつ効果が高い経費削減策に取り組みます。
一番最初に取り組むべきは役員報酬の削減策です。
② 経営改善策に取り組む
何でも良いのです。
例えば店舗の清掃、事務所の清掃、看板の清掃、照明器具の清掃、陳列の変更、在庫商品の整理、不良在庫の処分等、格別資金を必要としない事に取り組みます。
何かに取り組めば必ず何らかの効果が生じます。その結果で過去とは違う何かが始まります。
③ 売上高を記録する
前年同日比の売上高と本日の売上高比較を続けます。当然増減していますからその理由を探します。増加している場合は外部課題、減少していたら内部課題と考えて下さい。
④ 売上高増加策に取り組む
どうしたら売上が増えるのか、必死で考えます。思いついたことはやってみます。従業員の意見も取り入れます。
売上高増加策は経営改善策の中でも難しい方策で、必ずしも成果が出るわけではありません。
だから「やっても無駄」とか「効果がない」などという意見が出ますが、やらなければなりません。どんな方法でもとにかく実行することが何より大切です。
⑤ 1ヶ月毎に計画書の目標との到達度比較を行なう
経営改善計画書に記入されている売上高目標、経費支出額、営業利益額などを比較します。達成できていない場合は原因を探します。
⑥ 経営者の心が折れないよう、時には気を抜く。
気の抜き方はそれぞれ。酒でも良いし、ゴルフでも良いでしょう。
ただしギャンブルと女は御法度です。気を抜く頻度はせいぜい週に1回程度です。ゴルフは月1回程度と考えて下さい。
経営改善のために変えていくべきこと
「経営改善計画書」は実行するために作成するものですから、計画通りの成果を上げられるように取り組むことが最も重要になります。
経営改善計画書の作成以前は資金繰り多忙となり、経営者の気持ちも売上高増加や利益率の改善より支払手形の財源をどうするか、借入金の返済をどうするか、といったことに傾き、経営を見直す余裕を失っていたことと思います。
しかし、「経営改善計画書」を作成し金融機関との交渉を終えたことにより、経営そのものに取り組む余裕を得、具体的な行動も見えてきているはずです。
経営改善の取り組みを成功させるポイントは以下の3つです。
①経営者の姿勢
経営改善計画は、数値計画を作ったらそれで終わりということではありません。
数値計画はいわば設計図であって、それに基づいて経営改善を実行することが何よりも大切なことになります。
経営改善計画の実行を担保するのは何よりも経営者の意欲です。
経営者が本気で経営改善に取り組む意思がなければ、どんなに立派な計画を作っても役には立ちません。経営者の意欲は経営に対する責任感から生じます。
自宅を売却したり、役員報酬を真っ先に削減するのも、経営に対する責任感があればこそです。
②従業員の理解と協力
経営改善を成功させるもう一つの条件は、従業員の理解と協力です。
経営改善を成功させるためには、従業員の力を最大限に発揮してもらわなければなりません。
また従業員には基本的に雇用を守るために多少の不利益も我慢しようという意思はあります。
ただ、なぜそうなったのか、誰に責任があるのか、いつまでに何をすればよいのか、そうした点についての情報公開が行われないと、単に給与が引き下げられただけでは不満を募らせ、意欲の低下を招くことになります。
従業員に対しても金融機関に対するのと同じように事情をよく説明し、責任の存在を明らかにし、これからやろうとしていることや数値目標、数値目標の達成手段を明らかにします。
その上で「何を」、「いつまでに」、「どのように」すればよいのか、到達目標を具体的に指示をしてください。
「頑張ってください」だけでは成果は得られません。
この取り組みは長期戦です。経営者自身が意欲を持ち続けると同時に、従業員に対しても叱咤激励を続けながら、適切な時機にねぎらいの言葉をかけ、感謝の気持ちを伝えなければなりません。
③経営者の自己変革
経営が危機に陥った最終的な原因は、経営者の判断の不適切さにあります。
不適切さの背景には、経営者の知識不足、認識不足、経験依存主義、決断力のなさ、判断の誤りなどがあり、これらが改まらなければ経営危機は続くことになります。
知識不足や認識不足、判断の誤りは学習により補うことができますが、経験依存主義や決断力のなさを改善するためは価値観を改め、性格を変えなければなりません。
ある意味ではこれまでの生き方を否定し、転換する必要があります。
これはなかなか難しいことですが、経営者として責任を果たしていくためには必ず通らなければならない関門といえます。